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渋谷を歩いていたら、宮益坂の途中で、色や形が左右でちがう服を着た女性とすれちがった。「妙なカッコだな~」と思って杉本さんに話すと、あれはアシンメトリーファッションといって、若い女性の間で流行っているのだと教えてくれた。

あれが新しいファッションだったのか。いつだって最先端のファッションてのは、奇抜なのがウケるんだナ。だけどどんなに奇抜でも、以前なら「左右は同じ」ってのが洋服としての基本じゃなかったか。

ところがアシンメトリーファッションは、その常識を覆して見せたのだ。そこが斬新でウケたのだろう。だがいくら新しくても、それで見栄えがするとは限らない。果たしてあのファッションで、かっこよく見える人なんているんだろうか。

どうも着心地が悪そうだし、左右非対称なのは見ているだけでも落ち着かない。朝寝坊した人が大急ぎで支度して、駅に着いてから足元を見たら、左右でちがう靴下を履いていた。「アチャ~」。そんな感じである。

たかが着る物でもこれだけ違和感があるんだから、体の形が左右非対称の人は、きっと落ち着かないだろうな。そこまで考えたとき、「あ、これだ!」とひらめいた。

今まで、私が発見した左起立筋の異常や、背骨が左にしかズレない現象には呼び名がなかった。つまり、発見した私がこの現象に名前をつけなくちゃいけなかったのだ。

それなのに、いくら考えてもなかなかいい名前が浮かばない。左側に現れるから、最初は「レフティー現象」はどうかと考えていた。しかしこの現象は左側に現れるといっても、すべて左なのかどうかはまだ断定できない。

この現象の原因が特定できていない以上、ひょっとしたらこれから右側だけの人も見つかるかもしれない。そうなったら、「レフティー現象」ではちょっと都合が悪い。

その点、単に左右非対称を意味する「アシンメトリー」なら、例外があってもそのまま使える。これはいいかもしれない。イケそうだ。われながらナイスじゃないか。

早速、ご意見番の杉本さんに恐る恐る聞いてみる。彼女にはメールマガジンや出版で、私が書いたものを編集してもらっているから、まずは彼女がどう感じるかが問題なのだ。

彼女は、「アシンメトリー現象、アシンメトリー現象」と何度も口に出して、言葉の響きを確かめている。それからおもむろに、「ン、いいですね。ソレでいきましょう!」といってくれた。

ヤッタ!
なんたってネーミングは大事である。新しい商品は、ネーミングだけで売れ行きが大きくちがうものだ。本を出すときなどは、中身なんて関係ないぐらい、ネーミングとしてのタイトルが重要だ。

かつて発見されたどんな現象も、名前がなければ、その存在はだれにも知られることがないし、価値も認められない。「ゼロ」の発見だって「iPS細胞」だって、名前がなければこんなに知れわたることはなかったかもしれない。

「よ~し、アシンメトリー現象と名前がつけば、これでみんなにも知ってもらえるゾ~ッ」

私がむじゃきに喜んでいたら、杉本さんから、「発見は、発見したという事実をだれかに発見してもらわなければ、世の中に知られることはないのデス」と、ピシャリといわれてしまった。

その一言で、私の希望の灯は一瞬にして吹き消されたのだった。チーン。(つづく)

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