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「ジブン党バンザ~イ、バンザ~イ、バンザ~~イィッ」
年に1度開催されるジブン党の全国大会は、この万歳三唱でしめくくられる。細川俊子さんは党員になって30年、50代になった今も、毎年参加するのを楽しみにしているのだ。
特にこの万歳三唱するときの高揚した気分が大好きで、彼女にとっては、「ヨシッ、これからの1年もがんばるゾッ」と気合のスイッチが入る大切なセレモニーなのだった。
ところが今年は、去年からつづく五十肩のせいで右腕が上がらない。痛みに耐えながら勢いをつけて上げてみたが、やはり奇跡は起こらなかった。
そんな彼女の姿を見て、顔なじみの党員たちは、「オメェ、半分しか手ェ上げねえなんて、タニン党にでも鞍替えしたんだろ~」といって、からかった。
「もう、くやしくてくやしくてたまらなかったワッ」
数年ぶりに来院された細川さんは、私に肩の痛みの説明をしながらそういうと、大会のときのことを思い出して、また憤慨している。
たしかに五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎は、40歳過ぎたあたりからかなりの人が体験し、いつしか自然に治ってしまうものだから、あまり周囲の人から心配も同情もしてもらえない。
でも当事者にとっては深刻な状態だ。バンザイできないぐらいは大した問題ではないが、服の脱ぎ着から、入浴時にシャンプーするのだって、日常生活では何かと不便極まりない。しかも細川さんは、この状態が1年近くもつづいているのである。
一口に五十肩といっても、症状の出方は人それぞれだ。何年も症状がつづく人がいるばかりか、なかには、やっと右が治ったと思ったら今度は左に、という場合まである。その一方で、軽い人は数日で自然に治ってしまうこともある。
どっちにしたって、五十肩の症状で病院を受診しても、原因はハッキリしない。その上、なかなかスッキリと治してはもらえない。そこが厄介なのだ。
病院で治らないせいもあって、私のところにも五十肩の患者さんはよく来られる。実際にそういう人の体を調べてみると、首や背中の骨がズレて肩周辺に症状が出ていることが多い。
右腕が上がらない細川さんも、案の定、何か所も骨が大きくズレていた。やはり彼女の五十肩もズレのせいだったようだ。
ところがいくら症状の原因がズレだとしても、1年も放置してしまうと、ズレをもどしただけでは症状が消えにくい。肩関節そのものがさびついたようになっているから、しばらくはリハビリが必要なのである。
「もっと早く来てくれれば、ネ~」
なんて、落語の『手遅れ医者』みたいな言い訳をしながら、ズレをもどしていくと、即座にズレは消えた。
「これでもうズレはなくなりましたから、あとはちょっと痛くても、常に肩を動かすように意識して、リハビリがんばってくださいネ」
そう言葉をかけると、細川さんは笑顔でうなずいた。そして「来年の党大会に向けてがんばりますッ」といって、元気な足取りで帰っていった。
五十肩は中年期の通過儀礼だといわれることもあるが、原因が背骨のズレである以上、当然20代の若い人でもなる。
そういえば、ある日のこと、例の杉本さんと次のメールマガジンの打ち合わせが終わって一息ついていると、彼女が「先生、実は・・・」と話を切り出した。
杉本さんは感情をあまり顔に出さないタイプだから、「実は」のあとにつづくのが、いい話なのかどうかの判断がつかない。私は次に来る言葉を待って、一瞬、身構えた。
「実は、先生のマネをしたら、友だちの五十肩が治ったんです」
杉本さんはちょっと誇らしげにアゴを上げた。
私が思わず「そりゃスゴイ」というと、彼女も急にじょうぜつになって、腕が上がらなくなった友人の肩を治したときの場面を、「ああしてこうして」と身ぶりを混じえて再現してくれた。
私はこれまで、杉本さんに手技を教えたことはなかったけれど、そばで見ている間に覚えてしまったのだろう。20代半ばだというその友人からも、「キセキだっ」といって感謝されたのが、よほどうれしかったようだ。
「でも、私でもこんなにカンタンに治せるのに、なんでこの手技が広まらないンでしょうね~」
不満げな杉本さんに、私も返す言葉がない。私だって常々ふしぎに思っているのだ。これまで、このモルフォセラピーを広めるために、思いつく限りの有力者に会って話してきた。テレビにも出たし、本も出したし、講習会もつづけている。それなのに、どうもパッとしないのである。
同業者からの批判や医学界からの横槍があるにしても、そんなものがそれほど影響力があるものだろうか。普及のためにこれだけエネルギーを注いでいるのだから、他の商売ならとっくの昔に火が着いているはずなのだ。
「なんででしょうネ~」
私も、力なくつぶやくしかないのであった。(つづく)
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